龍 笛

り ゅ う て き


 

 龍笛は日本における横笛の代名詞ともいえる楽器で、琵琶湖などに生える女竹を加工し、吹き口と計七つの指孔(指をあてる穴)をあけ、

それ以外は樺巻き(桜の木の樹皮を薄く細く裂いて糸状にしたものを巻く)等を篳篥同様に施してその上から漆などを塗ってようやく完成します。

工程としては簡単なように思えますが、実際は大変らしく少しの加減で音が狂ってしまうといわれます。

笙は調律を失敗したらやり直せますが、篳篥や笛は失敗すればそれっきりの為、特に慎重に作る必要があり、

中でも龍笛は大きいので一度失敗すると大変だという事で、その製作は念入りであるという話を聞いた事があります。

 そんな龍笛の音色はどうかというと、龍の字からも察せられるようにまさに龍の鳴き声の如き鋭い音で、

雅楽の演奏においては地の響きの篳篥とつかず離れずの絶妙の掛け合わせをみせ、天からの光である笙とはその光の中を屈託無く自由に泳ぐ、

まさに龍の姿そのもののような音色であり、「天と地とを結ぶ龍」をあらわしているというその表現こそまさに龍笛という楽器の表現に他ならないといえるでしょう。

 演奏法の特徴として「和(ふくら)」と「責(せめ)」という吹き分けが出来るところがまずあがります。

これは強く息を吹きかけると高音になり、優しく息を吹きかけると低音になるという奏法で、これを利用した跳躍的な演奏を魅せられるのも横笛ならではの演奏といえます。

他にも指の動きによって装飾音を出す演奏や、掛吹きという別の楽器のパートのところに横笛が度々現れるという変奏的演奏も横笛ならではの醍醐味といえます。

 このように、気高い楽器である龍笛だからこそ名器も数多く残っており正倉院御物をはじめ、聖徳太子の「京不見(キョウミズ)」、

平 敦盛の「青葉」など高貴な方に愛でられた笛が多く今も伝わっています。

 この龍笛はどのような場で奏されるかというと、雅楽の交響演奏である管絃のうち「唐楽」と呼ばれる中国から伝わった曲の時に奏され、

現在各地で演奏される雅楽の大半はこの龍笛の演奏によるものが多いようです。(唐楽の曲数が多いため)他にも催馬楽、朗詠等の歌物においても奏されています。

 

引用サイト…「青葉雅楽会」