シリーズ・インフィニット・ワーズの詩(11)

無限なる生命


               西園寺昌美


地球環境保護が各地で叫ばれて久しい
環境汚染 自然破壊は種の存続をはばみ
人類も滅亡の危機に瀕している

この大自然の法則の掟を破り
自然の生態系を破壊しつづける
人類のあくなき欲望
放っておくと全地球を破壊し尽くすまで続くことであろう
それだけ人類の心が荒廃している証だ

地中奥深くに
およそ人間の眼の届かないところに
多くの昆虫 微生物が生息しているのを
どれくらいの人が知っているのであろうか

人類の繁栄と称して
地中は掘り返され 電線や鉄骨やコンクリートが埋め込まれ
昆虫は次第に自らの住家をなくしていった
仕方なく地上に現われた昆虫は
人間に踏み殺され 薬で封じこめられた

肥沃な土地は汚染され
昆虫は一体どこに生息したらよいのであろうか
人類によって住家を害された昆虫は
生きるところを探し求めると殺される
昆虫も自らが好き好んで人間の住む場を侵すつもりは毛頭ない
種の絶滅を恐れるのは本能である
限りなく生きようとし 生きる場を切実に探し求めている

私はシンガポールの昆虫博物館にて
一人の昆虫採集家に出会った
彼はサソリや毒グモを
自分の恋人のように扱っていた
サソリや毒グモは彼の手の平で
おとなしくじっと黙していた
刺す心がなければ 刺す必要もない
愛と信の強い絆で結ばれていた

彼は博物館にて常に生きた昆虫を人々に見せるために
アフリカ 中東 オーストラリア アジア等の
砂漠やジャングルに出向き 昆虫採集をする
昆虫の中には擬態化し 周りのものにすっかりとけこんで
昆虫の生態そのものを隠すものもいる
葉脈がそのまま浮き出た緑の葉になったり
細かい枯枝に擬態化したり
昆虫同士さえも見分けがつかないほど芸術的である

そんな困難極まりない状況のもとで採集するのである
彼はそれらの昆虫に語りかけるという
心を静謐にし 意識を昆虫に集中し
愛と慈しみと懐かしさの心をもって
昆虫に語りかけるという
サソリさん 毒グモさん どこにいるの
枯葉のようなカマキリさん どこにいるの
すると サソリや毒グモのほうから
私はここに居ますと応えてくれるという

何と高い次元の出来事であろうか
毒グモもサソリも彼の心を信じ
自らの生命を投げ出してくるという
自らが進んで彼の獲物になろうと
休も生命も彼のために捧げるのだ

なぜ人類だけが昆虫にも劣る恥ずかしき行為を繰り返すのであろうか
お互いがお互いを憎しみ合い 恨み合い
殺しつづけるのであろうか
この地球上に生息しているすべての生きとし生けるものよ
人類のあくなき欲望を赦したまえ
人類に内在している崇高な神の心を 愛の心を 慈しみの心を蘇らせるよう
私は祈る
そして祈り祈り祈りつづけてこそ初めて
人類が今日まで為しつづけてきた
すべての行為が赦されるのであろう

人間が心から自分の生命の尊さを知った時はじめて
他の生命の尊さをも知ることが出来るのであろう
無限に気高く神秘で偉大な存在
人間の生命そして生きとし生けるものすべての無限なる生命に
全感謝