シリーズ・インフィニット・ワーズの詩(1)
無限なる愛
西園寺昌美
無心で母の乳房を吸う赤子
無私なる慈しみのまなざしでわが子を見守る母
赤子は母の目を仰ぎ見ながら
この人を自分の母として選んだ瞬間を思い起こした
母もまたこの赤子より母として選ばれし喜びが
歓喜が
全身を貫いた
地上で出会いしこの奇しき縁 母と子
この生命の重さを 尊さを
万感の思いで抱きしめる
この子の明日は? 将来は? 天命は?
この子しか解り得ない
母にははかりしれないことなのだ
この子が自分を母として選択し 自らの運命を設定し 自らの天命を完うしてゆくのだ
母としての自分は
ただこの子の天命が無事完うできるよう
出来る限りのことをしてあげることだけだ
わが子が成長してゆく
その間 何が起こるかわからない
どんなに忙しくなるかはかりしれない
その時
明日のことを考えて生きずに
明日のために生きることを考えずに
今のこの瞬間を大事にしよう
赤子はすぐに赤子でなくなるのである
だからこそ 今ここにいて
赤子との尊い貴重なふれあいを大事にしよう
赤子のかわいい瞳をじっくりみつめて
たっぷりとお乳を与え
しっかりと抱きしめて
今のこの神の祝福の時を大事にしよう
明日のことを今考えるのはよそう
このせっかく与えられた至福のひとときを一瞬一瞬いとおしもう
よく人は言う
今我慢すれば明日はきっとよくなると
今無理すれば必ず明日は少しましになると
そうした親の心の不在から
子供の淋しさや不安や恐怖の体験が始まってゆくのだ
親は子のため 子の幸せのため 子の将来のためを考えて
常に今この瞬間のことよりも明日のことを思いわずらうのだ
そうして子は 今しかない母との大事なふれあいを 尊い瞬間を 未来の設計を
こわされてしまうのだ
子の明日は? 将来は? 人生は?
母が決めるのではない
その子自らが選び 自らが学び 自らが決めてゆくべきことなのだ
世のすべての母は錯覚している
子供の人生は 母がレールを敷き 導いてゆくのだ と
そうしたら子の意志は 子の選択は 子の決定はどうなるのであろうか
子供は幼稚園 小学校 中学 高校 大学へと進む
親はそのすべてを決定づけてしまうのだ
子供は今 この生命を謳歌したいのだ
子供は今この瞬間 大自然とふれあいたいのだ
子供は今しかないこのひとときを友と遊びたいのだ
子供は今与えられているこの尊い時 自分が欲するところのことを学びたいのだ
母は子供を自由に生かすべきだ
母は子供が学びたいことを自由に学ばせるべきだ
母は子供に将来を自由に決定させるべきだ
二十一世紀の子供たちはすべて自分の人生を自らが運んでゆくのだ
親ではない
自分にしかない自分の人生だからだ
母と子にとって今しかないこのひとときを
再び同じ時を共有することはないこの一瞬を
親は明日のことをわずらい 明日のことを思い 明日のために生きようとしている
親よ
今がこの子供にとって
親の意志を 慈しみを 無私の愛を受け入れるに
一番ふさわしい時であることを
決して忘れないで欲しい
そして無私なる愛を今与えて欲しいのだ
母の無限なる愛こそ 祈りなのだ
この祈りは無限なるエネルギーとなって
わが子の内に蓄えられてゆくのだ
子供はいかなることが起ころうと 生じようと決して恐れない
誰の世話にもならず
他のいかなる者にも頼らず
自らの内なる力によって突破してゆくのだ
この力こそ今この瞬間 母の無私なる愛から生まれるのだ
明日では決してない
偉大な母よ
明日を思いわずらうな
わが子のために今日、今の瞬間に生きよ
