雅楽とは
日本における『雅楽』とは、上代より我が国に伝わる御神楽(みかぐら)・東游(あずまあそび)・大和歌・久米歌などの歌謡と舞、5世紀頃から伝来する大陸系の楽舞、そして平安時代に笙・篳篥(ひちりき)・龍笛を伴奏楽器として成立する催馬楽(さいばら)・朗詠等の声楽の総称である。
これらはいずれも千数百年の伝統を有し、世界の最も古い音楽文化財として歴史的価値を持つ。特に、雅楽における和声と音組織は西洋音楽のそれと異なるものであり、高い芸術的価値を備えるものである。
今日『雅楽』は、アジアの音楽と舞がこの日本で結実した「東洋の総合芸術」として世界から熱い注目を集めている。
雅楽の分類
A.出自による分類
(1)日本古来の楽曲
上代(奈良時代)以前から、我が国に伝わるとされる音楽と舞。主に神道儀礼の中で培われ、育まれてきた。
神楽歌(かぐらうた)・東游(あずまあそび)・倭歌(やまとうた)・久米歌(くめうた)・大歌(おおうた)・誄歌(るいか)などの歌謡と、それらに付随する舞がある。
(2)外来の楽舞
5世紀以降、アジア諸国から伝来する楽舞。次の2系統にわかれて伝承されてきた。
・唐楽 (とうがく:インド・イラン・ベトナム・中国などに起源を持つ楽曲と舞。)
・高麗楽 (こまがく:主に朝鮮半島に起源を持つ楽曲と舞)
なお、左右両部制の下では、原則的に唐楽の伴奏で舞う舞楽を「左方の舞」、高麗楽の伴奏で舞う舞楽を「右方の舞」と分類した。
また、これらを参考にした国産の楽舞も多く存在する。
(3)平安時代の新作歌曲
・催馬楽 (さいばら:各地の民謡・流行歌が都の貴族により、雅楽風に編曲され、雅楽器の伴奏によって歌われるようになったものが、宮廷音楽のひとつに取り入れられ、大流行した。)
・朗詠 (ろうえい:漢詩に旋律をつけ、雅楽器の伴奏で歌う歌曲。15作品が現在に伝えられている。)
B.演奏形態による分類
(1)管絃(かんげん)
外来の音楽の演奏形態。以下の楽器により演奏される。
三つの管楽器 (=『三管』:笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・龍笛(りゅうてき))
三つの打楽器 (=『三鼓』:鞨鼓(かっこ)・太鼓(たいこ)・鉦鼓(しょうこ))
二つの絃楽器 (琵琶(びわ)・筝(そう))
※上記は唐楽の場合。高麗楽の場合は龍笛の代わりに高麗笛(こまぶえ)を、鞨鼓の代わりに三ノ鼓(さんのつづみ)を用い、現在は絃楽器を用いないことが多い。
『管絃』ということばは、オーケストラの邦訳『管弦楽』のもととなった。
(2)舞楽
管絃で用いる楽器の伴奏で舞われる舞曲。現行の形式では絃楽器は用いられない。
広義では、日本古来の楽曲に付随する舞も含まれる。
(3)歌謡
催馬楽・朗詠等の楽曲を、管楽器の伴奏で(催馬楽は絃楽器も使用)、笏拍子を打ってうたう演奏形式。
引用サイト…「瑞穂雅楽会」
●雅楽は上代から伝わる日本固有の音楽と、1400年ほど前か
ら順次朝鮮半島や中国などから伝来した古代アジアの大陸諸国
の音楽に基づき、またはその影響を受けて平安時代中期に完成
し、そのまま現在までほぼ原形のまま存在している世界最古の
音楽です。
●雅楽には「管絃」「舞楽」及び「歌謡」の三つの演奏形態が
あり、古来の皇室の祭、典礼、御遊、などに用いられ、また神
社仏閣の行事などにも演奏されてきました。
●「管絃」は楽器だけを演奏するもので、笙(しょう)、篳篥
(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)の三種の管楽器、琵琶、箏
の二種の絃楽器と鞨鼓、太鼓、鉦鼓の三種の打楽器の編成で演奏されます。コンダクター(指揮者)のいないこの演奏はアン
サンブルの極致ともいわれるもので、その真髄に迫る演奏をす
るには担当する楽器に精通することはもちろんですが、共に合
奏する八種類の楽器の動きを充分に把握し、演奏者同士の息
(意気)や間を感じ合うことが大切になります。
●「舞楽」は音楽と共に奏する舞で、「国風舞」(くにぶりの
まい)─日本古来の舞に基づいたもの、「左方舞」(さほうの
まい)─中国や東南アジアなどから渡ってきたものに基づいた
もの、「右方舞」(うほうのまい)─朝鮮半島から渡ってきた
ものに基づいたものとがあります。また舞のなかには数人で静
かに舞う「平舞」や面をつけて躍動的に舞う「走舞」などの区
別もあります。
●「歌謡」は雅楽器の伴奏をつけた声楽曲で、「国風歌(くに
ぶりのうた)」、「催馬楽(さいばら)」、「朗詠(ろうえい
)」という3つの種類があります。「国風歌」は日本古来の原
始歌謡に基づいたもので、神話の世界で歌われたとされるもの
がこの起源と言われ、多くは儀式用になります。「催馬楽」と
いうのは、平安時代、馬を牽くときに歌われた風俗歌から発展
し、宮中で貴族が楽しむ歌曲となりました。「朗詠」は中国の
漢詩に平安時代に日本人がメロディーを付けて、楽しみとして
歌われたものです。
引用サイト…「東儀秀樹オフィシャルウェブ」